モンスター

〜はじめの一言〜
黒い人が出てきます。ふふふ。裏にいかないもーん
BGM:嵐 Monster
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ほんの一瞬。彼女の手に触れる。

 

このところの総司の遊びは、やっている自分自身でもだいぶタチが悪いと思う。

洗いあがった洗濯物を渡された時。つつっ、と彼女の手首から肘に向けて一瞬、指先でなぞる。びくっと引きかけた腕から、何事もなかったように洗濯物を受け取る。

「ありがとう、神谷さん」

薄ら赤くなった顔に何事もなかったように笑いかける。

誰かと談笑しているところに加わる際に、彼女の背中を指先で撫であげるように一瞬だけ触れる。物問い気な顔で振り返るセイに気づかない振りで笑いかける。

ほんの一瞬の隙をついて、腕や肩や背中、触れられる箇所をつつぅっとなぞる。着物ごしに触れられる場所も、素肌に触れられる場所も。

びくっと反応する体と、何か言いたげな顔に平然と笑顔を向ける。

「なんでしょう?神谷さん」
「……なんでもないです」

半分泣きそうな顔で、彼女は自分から離れていく。そして、しばらくすると再び自分の前に現れる。
ひどく残酷なことをしている、という自覚はある。彼女が自分から音を上げるように、煽り立てて追い詰めているのだから。

それでも、総司はどこかで同じくらいの愉悦を感じていた。日を追うごとに、彼女が追い詰められ、自分のかけた罠にかかる様がなんともいえない。

隊士部屋の隣で眠る彼女に、深く眠っていることを確かめてから、そっと指先を伸ばす。耳の端から首筋を辿り、襟元のあたりまで微かに指先を触れさせて、移動していく。

「……ん」

微かに、眠っているのに指先に反応が返る。動きを止めて、様子を伺うと目を覚ます気配はまだない。再び、今度は薄ら開かれた唇の輪郭を小指の先でなぞっていく。
指先に触れる吐息に、自分自身が音を上げそうになる。

手を引いて、自分と彼女の布団の間に伸ばされた、白い手をそっと引き寄せた。
力なく伸ばされた手首に唇を這わせる。微かに赤い跡を残して、手の平に、指先に、口付ける。
指の間に、悪戯するように舌を伸ばす。ゆるりと舐めあげると、眠っているはずの眉間が寄せられて、手が引かれる。

起こさないように、掴んでいた手を離してやると、きゅっと握り締めた手が子供のように胸元に寄って行き、ふ、と口元が笑った。

もっと引き寄せたくなる自分の手を抑えて、鋭くなった目を閉じる。

 

堕ちる彼女を見て見たい。

 

残酷な欲望が心を占めて行く。
総司自身が耐えられなくなるのが先か、セイが音を上げるのが先か。

もう一度、周りの気配がすべて寝静まっていることを確かめて、目を開くと静かに体を起こして眠る彼女に唇を重ねる。
触れるか、触れないかの口付け。

体を床に戻して、眠る顔を眺めながら、口元には笑みが浮かんでくる。
残酷で幸福な時間。

急ぐことはない。楽しみはこれから。

 

– 終 –