寒月 17

〜はじめのお詫び〜
土方さんって…特に若い子が好きなんでしょうか。二次サイトでも結構若い子相手が多いですね。

BGM:Percy Sledge When a Man Loves a Woman

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そっと抱き締めていた土方が、さらりと肌の上をなぞり始めた。ようやく落ち着いてきた初音は僅かに触れて行く土方の指先に、つい今しがたの大きく自分自身を覆いつくした快楽の波の記憶が体に蘇って、それをもう一度、と熱を求める。

「妓はただ感じればいい。男がうまくなければお前がいいように導いてやればいい」

先ほどは、ぞくぞくと体の底から湧きあがるような感覚だったが、今は胸を弄ぶ手が優しくて、もっと強く、と思う自分をはしたないと思う心が押し殺そうとするのを、わざと焦らす様に土方は煽る。

「は……あ……土…かた……様…あぁ…」
「もっとして欲しいならそう言えばいい。男に夢を見せる妓だろう?」

優しいながらも、快感と初音の自分自身さえ知らない体を教え込んでいくのに、土方は適任だったといえる。伊達に若い時から女修行を積んでいるわけではない。
初音は白い腕を土方の背中に伸ばしてその体を引き寄せた。

「は…ぁ……」

言葉にならずに初音はその白い足を引き寄せた土方に絡ませた。初音の耳朶を甘噛みしながら、土方は合格だ、と囁いた。初音が絡めてきた足の間に、手を差し入れると潤みきってぬるぬるとしたものが溢れているそこに、再び指を沈めた。

「ああぁっ…!!」

きゅうっと指を締め付ける中だけでなく、ゆるく動く手が物足りないのか、初音が腰を擦りつけてくる。中に入れた指を増やしてやると、中が呼吸するように蠢いている。
今度は掻き回すように所々でくっと指を曲げて動かしてやると、初音の体が仰け反った。白い喉元を舐めあげてやると、ごくりと喉が鳴った。

再び上りつめはじめた初音に、土方は自分が羽織っていた襦袢を脱ぎ去って、初音の足を開かせた。もうどのくらいの時間がたったのかもわからない位、何度も押し寄せてくる波に初音は初めの怯えも羞恥も考えられなくなって、ただされるがままに土方を見つめた。

そそり立つ自身の雄を潤みきったそこに宛がうと、土方は初音に口づけた。深く舌を絡めて、そちらに意識を向けさせたところで、ゆっくりと襞の間に分け入った。

「んんんっ!!」

たっぷりと濡れていても狭い中は変わらなくて、土方の熱い塊が中に押し入っていくとその痛みと押し込まれる感覚に初音の体が強張った。腹の中に深く沈みこんでくる熱いものに、頭の中も五感もすべてが震えた。

きっちりと自身を沈めると、唇を離して痛みと混乱に涙を浮かべた初音をじっと見つめた。うっすらと目を開いた初音が、土方を引き寄せて自分から口付けた。土方もそれに応えて何度も口付けながら、ゆっくりと動き始めた。
時折、余裕をなくし始めた土方が、口付けの合間にはっ、と息を吐いた。

「くっ……」
「あっ…あんっ…、ああっ」

絶え間なく喘ぎ続ける初音に徐々に速度を上げていく土方は堪えようにも自身を熱く飲み込んで離さない初音の体に高ぶるものを抑えきれずに絶頂を目指して勢いを増した。

「はぁぁっ!あっやっ、あ、ひぃっ…」
「うっ、くぅっ…もう、いくぞっ!」

その瞬間、強く初音の足を掴んで引き寄せた土方は迸るものを初音の中にたっぷりと吐き出した。

どさりと初音に覆いかぶさって、土方は急に重くなった体を重くないように肘をついて支えた。荒く息を吐きながら土方は体を離すと初音の体を抱き締めてやった。

「上出来だ」
「……は…い。ありがとうございます」

土方に褒められて初音はうっとりと目を閉じた。
襦袢を羽織った土方は体を起して、火鉢の傍に行くと部屋の隅に置いてあった手拭を温かい湯で湿らせた。そして、初音の体を温かな手拭で拭きはじめた。
慌てた初音は身を起こそうとして下腹部に走った鈍い痛みにうっ、と動きが止まった。

「いいから。今だけは俺に任せておけ」
「……勿体のうございます」

優しく吹き清めて行く土方に初音の中に羞恥が戻ってくる。最後に足の間まで伸ばされた手に、つい恥ずかしくて足を閉じてしまう。それをやんわりと押し開いた土方は、蜜と血と自分が吐き出したものをきれいに拭ってやった。
あまりの恥ずかしさに顔を覆ってしまった初音に、日頃見せたことのない優しい笑みを浮かべてその頬を撫でた。

遠くで聞こえた時刻を知らせる音にすっとその笑みが引いて、厳しい顔が戻ってくる。襦袢を脱ぎ捨てると、土方は自分の着物を身にまとった。
今度こそ、初音は襦袢を身に纏って、起き上がった。土方の着替えを手伝うと、床の間においた刀を袖口で抱えると着替えの終わった土方に差し出した。

「すまんな。お前は朝までゆっくり休め。また明日来る」
「お待ち申しあげています」

膝をついて土方を見上げる初音に、土方は腰をかがめて口付けた。見送らなくていい、といい置いて土方は部屋を出て行った。
それから土方は約束通り三日続けて通った。

 

それからも隊務の合間に土方はひっそりと初音の元に通うようになり、三月目に身請けの話を決め、山崎にだけは話をして、極秘裏に妾宅を構えていた。
妾宅といっても、近藤や伊東のようにそこに住まうこともなければ訪れることも稀ではあったが、初音が仕事を続けているよりはそれでもいいと思う。ただ、い つ来るかわからない土方をただひたすら待って、時折様子を見に訪れるのは山崎のみという暮らしを不憫には思いながらも、その存在に確実に癒されている自分 がいることも土方は自覚している。

 

 

それでも、いつかは別れるというつもりが離れがたくなっていることが悔やまれる。

初音ではなく、今の名であるお初を抱き締めた土方は、お初と別れるつもりになっていた。突然の話に驚いたお初は、土方の腕を掴んでいた。

「お前はこんな暮らしでは駄目だ。俺がいつ来るかわからない日々をこれからいつまで続ける?いつか俺が斬られてもお前には誰一人として何も知らせることもなく、なにもわからないままたった一人でここで暮らしていくのか?」
「それでも初は構いません!歳三様が初に愛想を尽かされたのならば仕方ありません。でもそうでないならどうかそんなことはおっしゃらないでください!」
「駄目だ…。俺は新撰組の土方だ。俺に的をかけてくる奴らもいないわけじゃない。もしお前の存在が知れたらお前を巻き込むことになっても、俺はお前を助けてはやれん」

苦しげに吐き出した土方に、お初は寂しげに微笑んだ。

「もし、そんなことになった時は、初は自分がどうすればよいかなど存じております。歳三様にご迷惑をおかけしたりはいたしません。私ごときで歳三様が思い悩まれることはございません」
「……お初」

凛としたその姿に、土方は眼を閉じて懐にお初を抱えた。出会わなければ、この娘をこれほど苦しめることもなかったろうに、と悔やまれてしまう。それも自分の甘さ故のことだとも思いながら。

状況が状況だけにゆっくりしていることなどできはしない。
すぐに土方は立ち上がった。

「くれぐれも身の回りに気をつけろ。もし……、もしなにか心配な時は…」
「……もしも何かあったら、いずれかのお寺にでもお縋りいたします。ですから初のことはご放念ください」

きっぱりというお初の言葉に、なにも知れやれない自分が情けなかった。しかし、そんな後悔もすぐに追いやってしまわなければならない。玄関を出る間際に、懐に入れていた手持ちの金子をお初にすべて渡した。

「次にいつ来られるかわからん。今あるだけを渡しておく」
「そんな……十両も……」
「女ひとりだからそんなにはかからないと思うが、何があるかわからないから持っていろ」

お初はその紙入れを胸に押し頂いて、頷いた。

「次においでになる時まで、お預かりしておきます」

そういうと、先に玄関を出て、周囲に目を配った。誰も人気がないことを確認すると、頷いて土方を外に出した。そのまま土方が出るとすぐに玄関を閉めた。土方も振り返ることなく屯所へ戻った。

お初は閉じた玄関先で、土方の足音が去っていくのをいつまでもじっと耳を澄ませていた。

 

 

 

– 続く –