2011.12.18

貢物なんですが、なんでこういう話になったんだっけ。それすらおぼえてないや。楽しかったことは覚えてる(笑)

 

無礼講の酒席も遅くなればなるほど、皆限度も理性もなくしていく。
酔っぱらいの中で、つられるうちに調子に乗り始めたセイをやんわりと引き離すと総司は先に戻ると言って、屯所へと向かった。

すっかり酔っぱらいのセイを肩に抱えて歩いていると、セイがうなり声を上げた。

「せんせぇ~」
「はいはい。なんですか」
「気持ち悪いですぅ~」

散々酔っぱらった挙句に総司に抱え上げられてゆらゆらと揺らされれば確かにそれも仕方がないだろう。
だが、今日は屯所まで離れたところでの酒席だけにまだまだ先は長い。もとより無礼講で今日は外泊しても咎められはしないだけに、仕方なく総司は近くの小さな盆屋に入った。

ぐったりしたセイを抱えた総司に、店の者があらあらと苦笑いを浮かべて、部屋へと案内すると気を利かせて手桶に冷たい水を汲んで手拭と共に部屋に置いて行ってくれた。
そのほかには、冷えた水を枕元におくようにと用意を整えるとすぐに部屋から出ていく。

寒いというのに部屋の窓に寄り掛かったセイがぼんやりと風に当たっていると、総司がその傍に来てセイを抱き抱えるようにして冷えない様にする。

「あ」

素直にそうに肩に頭をあずけたセイは先ほどよりも、空を見上げる形になって、ちょうど視線の先を流れた星を捉えた。

「ん?なんです?」

セイの小さな呟きに反応した総司がセイの頭の上から覗き込むように見下ろすと、見上げたセイがにこぉっと笑った。

「せんせぇ、流れ星」

すっかり酔っぱらったセイが甘えた声を上げて夜空を指差した。間近で酒の匂いをさせて、上気した顔のセイが見上げてくる方が総司には酔いを誘う。

「酔っぱらいのくせによく見てますねぇ」
「酔っぱらいはお嫌いですか?」

口を尖らせたセイがあまりに可愛らしくて、くすっと笑った総司がセイの体を支えている腕に力を込めた。

「酔っぱらいは困りますねぇ」
「どうして困るんですかぁ?」
「どうしてって……、困るのは神谷さんじゃないですか?」

きょとんとして、総司の腕から離れて窓の方へと体が傾いたセイを引き寄せて総司が一瞬の隙をついた。

「……………………っ!!!」

何が起きたのか、セイの脳みそに到達するまでに少しだけ間があってから口を押えて一気に真っ赤になったセイが窓側へと身を引いた。

「ね?困るでしょう?」
「こ、こまっ……」
「だって、神谷さんがものすごくお酒臭いんですもん。私まで酔っちゃいましたよ」
「よっ、酔っちゃったって、先生だってお酒飲んでたじゃないですかっ」
「ええ。だから酔っぱらってるんです」

―― 神谷さんに……

思いがけないことへの動揺とまだ冷めきらない酔いに、くらりと目が回ったセイを軽々と総司が抱き上げた。

「えっ?!えぇぇぇぇ?!」
「あんな窓辺にいたら風邪ひいちゃいますよ。横になっていても外はみえるんじゃないかな」

暴れかけたセイにふっと腕の力を抜くと、転がり落ちそうになったセイが慌てて総司にしがみついた。

「よくできました」
「っ!!よくできましたって……っ」
「しぃ……。そんなに騒いだら流れ星だって驚いちゃいますよ」

そういうと奥の部屋へとセイを連れて足を踏み入れる。

今夜くらいはお星様が願い事をかなえてくれるはずだから。

いくつもいくつも振る星のように、甘い囁きは繰り返されていった。