恋情 1

〜はじめのお詫び〜
土方さんファンの皆様。。平にご容赦くださいませ(滝汗
挑発以降で分岐してますね。「秘密」に行かなければこんなのもアリかしら~。

BGM:abingdon boys school HOWLING

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ポトガラの一件以来、土方は何度も斉藤の言葉を思い出してしまっていた。

『正常な男子であれば、ほぼ完全に女子化した神谷の肉体に惑わぬものはいないでしょう』

畜生。。。余計なことを言いやがって。

『日々邪な欲望に…・』

「だぁっ!!」
「副長?」

何度目かの書き損じと、頭の中に蘇る斉藤の言葉に書きかけを握りつぶしてしまう。
背後で書類の始末をしていたセイが訝しげに振り返った。
不思議そうに見開かれた目。軽く開いた唇。

「…なんでもねぇ。茶頼む」

何だというのだ。俺は女修行を積んだ身だぞ。童にも衆道にも興味はないはずなのに。

「…わかりました」

不要な問いかけをしないのは、神谷も俺になれてきたということか。

そのまま、やりかけの紙の束をおいて、部屋から出て行った。
深い溜息が響く。

このところ土方には様々な悩みが以前より増えていた。
大きなものは、伊藤参謀に関わることだ。今はまだ斬るわけには行かない。仮にも幹部の一人であり、土方に迫ってくるくらいで何かをやったわけではないのだ。
近藤と共に向った広島での出来事も、京においてはなりを潜めているわけであるし。

いっそ、何かやってくれたほうが遠慮なく斬れるんだが…。

そして、土方の心は日々迫る伊藤の戯言に流されて、セイにむかい始めていた。
日々迫ってくる伊藤に耐えかねて、セイを利用しようと小姓にして、衆道を装ってみた。

いつ、自分が堪えきれずに斬ってしまうかわからない。
その不安から、セイに縋ってしまった。

そこから何かが狂い始めた。

修道の気はないと思っていたのに、セイを意識してしまう。総司に、色小姓扱いはやめてくれといわれたとき、俺にその気があれば、隊務だと言ってしまったことが悔やまれた。
隊務なら…と思いかけて何度自分を引き戻したことか。

そして、先日の“女装”騒ぎだ。
あれを見た瞬間、自分の中で男が騒ぎ出した。まるで、その姿を見たかったのは自分かと思うくらい、あんなことをさせた自分を悔いた。

しかし、運命は残酷に。自身の恋情を引きずり出すがごとく。

あれ以来、他の隊士たちの目を避けているセイを、再び自分付きとしてそのほとんどを副長室に置き、夜になれば異例ではあるが、幹部と同等に休息所での寝泊りを許していた。
しかし、その日はあまりに仕事が多く、遅くなってしまったため、局長室へ泊まる様に言ったのだ。
自分は伊東からの呼び出しをうけていたので、どうせ夜はいない。ならばと。

夜半遅くに戻り、どうしても寝付けずにいた。伊東の甘言に乗ってはいけないと思いながらも無視できる状況では、とうになくなっていた。

「…?」

少し離れたあたりの気配を感じて、するりと部屋から忍び出た。
幹部棟用の奥まった場所にある井戸端で、白い影を見つけた。
不在者がおおく、今夜の巡察は一番隊である。副長である自分も不在の間にと思ったのだろう。
井戸端で身を清めている姿に、息を呑んだ。

頼りなげな細い背中と、真っ白な晒が目に入る。その姿は誰が見ても女で。

この吐く息さえ白くなる時期に、こんな井戸端で…・。

「馬鹿がっ…・この寒いのに何してやがる!」

声を潜めてはいても明らかに、怒りのこもった声で後ろから大股で歩み寄った。
急に現れた土方に飛び上がるように驚いたが、大きな羽織に包み込まれて身動きが取れない。

「っ、副長っ」
「こんなに冷え切ってるだろうが!」
「離してくださいっ!」

自分の羽織をかぶせて、そのまま抱えあげた。
何とか逃れようと、力いっぱい暴れても、その大きな腕に抱え込まれて、わずかも離れることが出来ない。そのまま、温まった副長室に連れ込まれた。
元々、遅く戻ったときにと、土方の布団と火鉢を用意していたのはセイである。
暖かい部屋の中に入ると、そのまま布団の中に抱きかかえられたまま包み込まれた。

– 続く –