風のしるべ 33

〜はじめの一言〜
あ、現代編でこのシリーズでは初めて闇に回りましたね。しかも先生じゃない!原田兄貴ですよ。
BGM:Believe in love
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髪の生え際に口づけると、まだキスに慣れないまさみがその身を強張らせた。
それでも、可愛くて、愛おしくて、瞼から頬、そして唇に触れる。

数えられそうなほどしかしていないキスを何度も繰り返す。

少しだけ怯えが解けたのか、寄り掛かってきたまさみの首筋にちゅっと音をさせて口づける。

「あ……っ!ちょ」
「あんまり可愛いからなぁ」

だから仕方ないのだとよくわからない言い訳を口にすると、原田はまさみを背持たれていたベッドに抱き上げた。啄むようなキスと、舌先で唇をなぞるキスを繰り返しながら、するっと片手を部屋着の内側に滑り込ませた。

「ひゃぁっ!」

一気に身を固くしたまさみに、原田は手を止めた。真上からまさみの顔を覗き込むと、じいっと見つめる。半分目を閉じて固まっていたまさみがおずおずと目をあけた。

「嫌ならやめる。今すぐ帰る。……どうしたい?」

そんな二択はないだろう、と言いたかったが、ぎゅっと目をつむったまさみは原田のシャツを握りしめて、蚊の鳴くような声で言った。

―― 帰っちゃだめ

一拍ぶん、目を見開いた原田は、一度手を引くと、ぽん、とまさみの頭の上に手を置くと覆いかぶさっていたベッドから起き上がった。

壁のスイッチを消すと、枕元の小さな灯りだけになる。もう一度、ベッドの上に片膝と手をついた原田はごつん、とまさみの額に自分の額をぶつけて見せた。

「大事にする」

ぎゅっと原田にしがみついてきたまさみの手が震えていたのも可愛くて、じれったいくらいに時間をかけてまさみから一枚一枚、と着ているものを奪っていった。

「んっ……」

怖がらせる隙間を与えないように、軽く触れるキスの合間に、ワイシャツとスーツのパンツは脱いでしまった。
まさみにとっては小さ目な胸も凹凸の少ない体も、コンプレックスの塊でしかない。
それを原田は薄紙を剥ぐように導いた。

「まさみちゃんの肌はすべすべで気持ちいいなぁ」
「嫌っ、そんな、の言わなくても……っ」
「言わなきゃ俺が想ってる事なんかわかんないだろ?この胸も柔らかくてすっげぇいい」

ずるっと体を滑らせると、両手で包み込んでいた胸にちゅっと音をさせて口づける。胸の内側に左右一つづつ、キスマークを残す。

指先でそっと頂を擦りあげるとまさみは、恥ずかしくて、手の甲を口に押し当てて顔を隠した。

「んんんっ!はらださ……ぁん」

子供のように怯えたまさみをあやすように時々、頭を撫でながらキスの雨を降らせる。
上気した肌に、じわっと汗が滲む。

愛おしいものが腕の中にある。

ふいに、愛したいという感情と、壊したくないという感情に胸が締め付けられた。

まさみの肩の上に顔を埋めて強く、抱きしめていると、翻弄されていたまさみがそうっとその髪に触れた。

「……大好きで……、なんでかわかんないけど。原田さんに、会う、と……」

ぐすっと浮かんできた涙が流れるのに任せて、まさみは天井を見上げた。目を閉じた原田が、うん、と頼りないくらいの小ささで答える。

「一緒にいたくて、離れたくないんです。離れたらもう会えなくなるような気がして……。いっつも泣きたくなるんです。だから、……ぎゅってしてください」

思い出さなくても、記憶のどこかにねむるまさが、今も泣いているんだろうか。
そう思うと、切なくて、苦しくて。あの時、戻れなくてごめん、と今更謝りたくなる。

「大事にする……」
「うん……」

原田の首に腕をまわしたまさみをぎゅっと抱きしめると、まさみの足を引き上げた。潤んだ蜜の間にそっと指を這わせると難なく飲み込んでいく。
すぐに指を増やして、馴染ませてやると、まさみが足を絡めてきた。

可愛すぎて、困ったような顔でまさみに口づける。

「ちょっとだけ、我慢して、な」

早い気もしたが、ぐっとまさみの体を引き寄せると、びくっと腕に抱えた足が跳ね上がった。

「やぁっ!いっ……!」

一息に押し入るには狭い襞の間で、動きを止める。苦しそうに小刻みな吐息をもらすまさみの頭を何度も撫でた。

「やめるか?」
「……嫌!」

泣いているくせにと言いたかったが、ゆっくりと一度身を引くと、今度は躊躇わずに奥を目指した。しがみついてくる手を取って指を絡める。

最奥をゆるっと押し上げたあと、すぐに身を引く。波がさらうようにゆっくりと、まさみを揺らす。

優しくて、温かくて、濃密な時間。

それは原田が大事に大事に想っていることを肌で伝えてくるもので、また涙がこぼれてくる。

―― 大好き。

それしか浮かばなくて胸が苦しくなる。

「……なんで、こんなに。……ぁっ」

苦しいのかわからない。ただ、寂しさと愛しさが急激にこみあげてきて、まさみは思い切り原田の背に腕を回した。
わざと、少し爪を立てたら、鎖骨のあたりに強くキスの跡を残される。

揺らいでいた想いを注ぎ込むように原田は抱いた。

– 続く –