強者の伝説 2 <拍手文 10~11>

〜はじめの一言〜
5本目の拍手。お礼キャンペーンで拍手なのに連載(←鬼)
こ、こんなに長かったっけ(汗)お礼SSどころか普通にUPしてもよかったかも。反省
BGM:トンガリキッズ B-DASH
– + – + – + – + – + – + – + – + – + –
監察方の山崎を筆頭にするという、恐るべき謀り隊が着々と準備をはじめた。

– 謀事そのいち —

小者達が嵐の前触れとばかりに自然と行った『神谷さんの雑用を減らそう』作戦は、いつもながらセイが自発的に仕事を探し出してしまうので、結果的には隊内の雑用が恐るべき早さで片付けられていくということになっている。

「あっ、沖田先生」
「林さん?なんでしょう?」

監察方の林が総司を見つけると珍しく近寄ってきた。監察の隊士は幹部以上なら皆知っているが、普段は隊士達と交わる場所にはなかなか出てこないので平隊士達の面識は少ない。

「実はこの前、山崎さんと一緒に甘春堂に立ち寄ったんですよ。そこでいただいたんですけどね、こう羊羹のようでいて干錦玉の中に丹波大納言を入れた微妙な味わいがえもいわれぬ……」

話をきいているだけで涎が出てきそうな総司である。その反応をみて、得たりとばかりに林が続けた。

「すっごい美味しかったんですよ!!ぜひ店でいただくといいですよ」
「そうなんですね!!じゃあ、次の非番に神谷さんを誘って行って見ます!!」

ニヤリ。

「??何か変ですか?」
「いえいえ、神谷さんも甘いものがお好きですからね。ぜひそうしてください」
「ええ!」

その様子を伺っていた三番隊所属の謀り隊の者たちが次々と散っていく。あちこちで急な用を頼んでセイを足止めしている間に、セイを探し回る総司の姿が屯所内のあちこちに現れることになる。

「なんで沖田先生は神谷を探してるんですかねぇ?」
「ああ。どうせ次の非番の日に甘味を食べに行こうって話だよ」
「はぁ……そんなに甘味好きなんすか?」

確かに稽古では、鬼のように恐ろしい総司がにこにこと笑顔でセイを探し回る姿を初めて目にすれば驚くだろう。
すかさず、周囲を取り囲んだ告知隊と謀り隊の者たちが声を揃えた。

「「「馬鹿だなぁ!!神谷と行く甘味がいいんだよ!!」」」

非常に納得がいくような、行かないような微妙な様子で新人隊士達は顔を見合わせる。

「まあ、……あんなに若衆と見まごうばかりの美童連れてじゃ、楽しいですよねぇ」
「そうだよなぁ。妓よりも甲斐甲斐しく相手してくれそうだし」

その言葉に、謀り隊の皆の目がきらりと光った。謀り隊の行動は告知隊との連携によって非常に素早いのである。

– 謀事そのに –

「斎藤先生、飲みに行かれるんですか?」
「うむ」
「どのあたりまで行かれるんですか?」
「……何かあるのか?」

告知隊の隊士の任務の一つ、隊内での密告にまんまとかかった斎藤に、物影に潜んだ謀り隊の者達も、一斉によしっ、と拳を握った。

さりげなく、告知隊の隊士は三番隊の小早川が斎藤に告げた。

「いや、神谷が甘春堂の菓子が美味いとかで食べたがってたらしいんですよ。この前、神谷を酒に連れて行くのは後が大変だっておっしゃってたんで甘味なら宜しいんじゃないですか」
「ふむ。そうか」

あくまでさりげなく、が身上のためすぐに小早川は斎藤から離れた。後に残った斎藤は、その場に立ち止まったまま、ふむ、と何か頷いている。
そこに、謀り隊に誘導されたセイが現れた。

「あ、兄上!お出かけですか?」
「うむ。アンタ、珍しく暇そうだな」
「そうなんですよ。副長から夕方までお暇を頂いたのでこの時間に雑用でも片付けようと思ったんですけど、皆、小者の皆さんがやってくれちゃって……」
「そうか。じゃあ、たまには俺と飲みに行くか?」
「よろしいんですか?やった!」

喜んでセイは斎藤について屯所を出て行った。斎藤は頭の中で甘春堂の場所と近くの飲み屋の位置関係を思い描いていた。

「……あれ?今の、斎藤先生と出て行ったのって神谷さんじゃありませんか?」

新人隊士の一人、比較的理性派の者が、門を出て行く斎藤とセイを見かけて呟いた。離れた所にいた総司がその一言に反応して、大階段まで飛んでくる。

「今、神谷さんって言いました?」
「あ、ええ。斎藤先生と出掛けて行ったみたいですけど?」

がっかり……。

ありありと顔に書いた総司に背後から告知隊の一人が追い打ちをかける。

「なんか、久しぶりに斎藤先生と出掛けるせいか、すごい嬉しそうでしたよ」

ゆらぁ……。

くるりと振り返った総司が、告知隊の隊士にとりついた。

「……なんですか?それは、私とばかり出掛けていてはつまらないとでも……?」
「やあ、どうかなぁ?お前ら、ちょっと沖田先生の話を聞いてみろよ」

すかさず新人隊士をさらに二人捕まえて、三人を総司の生贄に差し出すと、告知隊は脱兎のごとく逃げ出した。
捕まった三人は、暇になっちゃったんで稽古してあげますよ、という総司に徹底的にぶちのめされて、這うように道場を出ようとすると、再び妖気を漂わせた総司にとりつかれた。

「ところで、本当に私とばかり出掛けていてつまらなくなったんでしょうかねぇ?」
「そ、それは俺達には、わかりませんよ」
「そんなことないでしょう?あなたはこの前神谷さんにかすり傷を手当してもらっていたし、あなたは綻びた稽古着を繕ってもらっていたじゃないですか。しかも、そんな神谷さんが土方副長の色小姓じゃないかって噂してましたよねぇ?」

三人は、なぜそこまで!!と思っただろうが、セイに関して総司が知らないことはないのではないかと皆が思うほどなのは隊内では周知の事実なのだ。一番隊組長の恐ろしさを身にしみた三人は、その後、土方のところへ異動願いを嘆願に行った。

現時点で新人隊士三名離脱。

 

– 続 –