恋路の傍ら ~拍手お礼文

〜はじめの一言〜
おまけがあったんですよ。旅路にはね

BGM:
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隊部屋に戻ってから、近藤の手伝いにまわったセイはさておき、総司は一斉に取り囲まれた。隊士を代表して山口がずいっと顔を近づけてくる。

「な、なんでしょう」

冷や汗をかいた総司が引きつった顔で問いかける。くんくんと総司の周りで匂いを嗅いだ山口がじろりと睨みつける。

「沖田先生!」
「は、はい?」

腰に手を当てた山口だけでなく、相田や小川、他の隊士達もずいいっと近づいてくる。

「言いましたよね?俺達」
「がっついちゃだめですよって!!!なのに!!その顔!」

びしっと四方から指差された総司は万歳の状態で両手を上げた。

「めちゃくちゃがっっついたんじゃないっすか?!」

ぎく。

身に覚えがなきにしもあらずなので、ぎくりと天井を仰ぐ。

「沖田先生?!その顔!!!!!」
「ほんっっっっっとうに神谷の事?!」
「がっついたんすか?!」
「温泉で!」
「くんずほぐれず!!」

くぅぅぅっと一斉に隊士達が身悶えして、暴れはじめる。困惑した総司が、周りを見回すとぐるん、と一斉に顔が総司を振り返った。

「そうとなれば」
「「「そうとなれば!!」」」

「沖田先生!!」

びしっと全員の顔が間近に迫る。青ざめた総司は少しずつ後ろに下がろうとして、背後からも隊士達に囲まれたことを知る。

「ぜひっ!!委細を!!」
「かっ、勘……、いやっ、冗談でしょう?!」
「冗談なものですか。まさか逃げられると思ってませんよね?」

ぐいっと周囲を囲む輪が狭まる。

「な、何もお話しすることなんて……」
「おう!お前ら!!」

その囲みの向こうから原田と永倉、藤堂が現れた。

「よしよし。捕まえてたよな」
「そうそう。総司によおおおおく聞かないとね!」

助け手が現れたかと思ったがそれは大きな間違いで。隊士達以上に恐ろしいメンツがそろったことを知った、総司は何とか逃げなければと周囲へ視線を向けた。

「では先生。首尾をお話いただきましょうか!!」
「ああっ」

ぱっと足元を指さして屈みこんだ総司に、皆が何事かと下を向く。その隙をついて総司が逃げ出した。

「逃げた!!」
「追え!!」

どどどど・・・。

「まったくにぎやかだな」

呆れ返った、というより、こめかみに青筋の立った斉藤が顔をひくつかせてその騒ぎを聞いていた。

―― あの平目。いつかシメてやるっ!!

斉藤は握り拳を固めると、総司を捜索する彼らに力を貸し始めた。
廊下の縁の下に逃げ込んだ総司を見失った隊士達は、総司が隠れている廊下の真上に固まっていた。

「しかし、あの沖田先生だろ?がっついたっていってもなぁ」
「い~やっ!お前らは甘い!!」

原田が両手を腰に当てて喝を入れる。

「あいつが誰だかわかってねぇよなぁ」
「いいか?あいつは近藤さんの弟子だぞ?しかも、兄分はあの土方さんだぞ?!」

永倉と原田のコンビニ、隊士達はゴクリと唾を飲み込む。それを聞いた縁の下の総司は再び真っ青になる。

「ま、総司の事じゃん?あいつ意外といじめるの好きそうだし」

ぎく。

「近藤さんの体力をそのまま引き継いでるから下手すりゃ、朝までがっつりだろうね~~~」

ぎくぎくぎく。

「ま、ま、まじっすか。藤堂先生!」
「うん。総司ってさ、根っこがあまえたがりの癖に可愛いといじめるじゃん?」

皆、普段からセイの扱いを見ているだけに全員がしっかりと頷く。

「だから~、意外と攻めると思うんだよね」

ぐさぐさ。

「あ~、あり得そうだな。あいつ、意地っ張りだし負けず嫌いだし?」
「そうそう。だからめちゃくちゃいじめながらかわいがるよな」
「間違いないね」

ぐさぐさぐさ

徐々にひそひそ声になるあたりが皆、がっつり食いついている。足元に総司がいるとも知らずに、車座になってみんながひそひそと話を始める。

「神谷もさぁ。意外と気が強い割にめちゃくちゃいじめられてそれで喜びそうだよなぁ」

原田の言葉に一番隊の隊士達が徐々に前かがみになっていく。縁の下の総司はそのあたりになってくると真っ青な顔から徐々にどす黒くなってくる。腕組みしてにやにやとしている永倉が、続きを引き取った。

「ま、がっついたとしても、一晩や二晩じゃ足りねぇだろうな。どうせ、あいつら、今日はさっさと寝るだろうし?」

くぅぅ、と身もだえした相田が涙目で永倉を見上げた。

「永倉先生っ!それって、それって!」
「ああ、そりゃ、もちろんだろ?一晩目はネチネチと神谷をいじめて、昨日は最後の晩だってんで、朝まで神谷を寝かさないって寸法だろ」

ぱたた、とあちこちで鼻血を出すものが出始める。

「永倉先生!そのネチネチのあたりから是非とも詳しく!!」

ふふん、と顎に這えた髭を撫でた永倉がひそひそひそっと囁くと、おおお~~~~!!!という声が上がった。
ついに我慢しきれなくなって総司が飛び出した。

「何をいってるんですか!!貴方たちは!!」

ぐるん。にや~~~り。

「だから、そのネチネチを本人に語ってもらわねぇとなぁ?」
「そんなことあるわけないでしょう!!!」
「じゃあ、お前、ここで稽古着に着替えてもらおうか」

ぎく。

「まさか爪の後とか艶っぽい跡なんかねぇよなぁ?」

ぎくぎくぎく。

「神谷だと、ちっさいからなぁ。この肩のこの辺あたりについてんじゃねぇの?」

さーっと血の気が引いた総司はじりじりと後づさる。

「じゃっ、総司?」
「い、いえ……ご遠慮します」

くわっと目を見開いた皆に囲まれて再び総司が逃げ出した。

「沖田先生~~~」
「総司~~~」
「「吐け~~~~!!!!」」

屯所の中に絶叫が響き渡った。

– 終わり –