花水木

~はじめの一言~
湧いてきちゃいました。こんなベタベタなの本当なら許されませんよね。
ああ、もうほんっとにスイマセン。

BGM:一青窈 ハナミズキ
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久しぶりに、一番隊の隊士部屋に戻った愛すべき小柄な隊士が、隣で安らかな寝息をたてている。ふと、寝顔を見ると何の躊躇いもなく可愛い、と思ってしまう。

いつか。

貴女が、私の傍をはなれて、本当に愛しい人の傍にいられるのなら。

今は、素直にのびやかな芽を伸ばす貴女が、私たちに与えてくれるものが一体どれだけあるんだろう。貴女の思いもかけない優しさや、柔らかさにいったいどれだけ癒されているのか。
無骨な枝に囲まれて、可憐な花を咲かせる貴女が愛しい。

きっと、今ならば素直に思える。初めて貴女が女子だと知ったあと、可愛いと思ってしまった。それ故に、貴女を見ていたくて、何度も突き放そうとして突き放せなかった。何度も何度も、酷い言葉で貴女を傷つけて、私の中から貴女のことを切り捨てた私に、それでも手を伸ばしてきた。

男であれば。敬愛していた人をも、この手で斬りながらここにある私に。

それでも貴女だけは。きっとこれからも私の矜持を揺るがせる貴女を斬ることはできないだろう。

相も変わらず、想い惑うことはあるものの、自覚した想いはゆるゆると自分の中に違和感なく落ち着きだしている。自分の中で唯一と定めたものと、いくらの差異もなく、己の中に共存し始めている。

夕刻の、彼女を一番隊の私のもとに戻してきた土方とのやりとりを思い出す。
何かがまた、動き出そうとしているんだろう。平穏な日々など、望むべくもない自分たちではあるもののこの眠りだけは守りたい。せめて、それが今自分の手にある今だけでも。

周りが寝静まっていることを確認して、眠りの中に投げ出された白い指先に、そっと口付ける。誰にも、本人にさえ気づかれないようにそっと、守りをあたえるかのように。

いつか、貴女が想う人の傍に寄り添う日がくるまで。
決して言葉にすることのない言葉。

『私の想いを受けてください 』

– 終 –