大人ごころ<拍手文 2~4>

〜はじめの一言〜
2本目の拍手文です。この辺だいぶ調子に乗っているかと(汗
再び加筆しています。
BGM:安全地帯 雨
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「ようよう!!総司!」

突然、原田と永倉に両脇から首を掴まれた。二人はニヤニヤと口元を緩めている。

「お前、隅におけねぇなぁ」
「えっ?」
「ほんとになぁ~」

二人は総司の両脇から脇腹を小突きながら、散々からかってから去って行った。 何の事だか全く心当たりのない総司は、まったく事態が飲み込めないまま幹部棟へ向かう。
副長室に向かうと、ひどく機嫌のいい土方が招き入れた。いつもは忙しいの、うるさいのと追い払われることが多いのに、珍しいことだ。

「総司、お前も大人になったよなぁ~」
「はぁ?」
「いい。わかってるさ。何か相談事があったら言えよ」
「一体、なんのことですか?」

面白そうに笑う土方は総司がわけがわからなくて、聞き返す姿を照れ隠しか何かだと思ったようで、ひとしきり、奥手だと思っていたけどなぁ、とかいや、だからこそだな、とひとりで納得した揚句に、用はすんだとばかりにさっさと追い出されてしまった。

「みんな、いったいなんなんですよぅ……」

わけのわからなさに徐々に不機嫌になりながら隊士部屋に向かうと、今度は一番隊の隊士だけでなく他の組の隊士たちも集まって何事か騒いでいる。

「あっ!!沖田先生!」

ひょこっと顔を出した総司に向かって、隊士たちが一斉に振り返った。

「先生、さすがですねぇ!」
「やっぱりいい男はすごい!」
「な、なんです?」

隊士達が顔を赤くして盛り上がっている。ここでもか、と思いながら、総司が聞き返すと、皆がすっかりわかっているとばかりに頷いている。

「いやっ、いいんですよ。わかってますよー、沖田先生!」
「沖田先生も男ですからね!俺達はわかってます!!」

皆がにやにやと頷くだけで肝心の何があったのかを教えてはくれない。苛立った総司が、声を上げた。

「だから!!いったい、私が何を……」

言いかけた総司の声を遮って、一番隊の隊士たちが声をそろえた。

「「「俺達、神谷には黙ってますから!」」」

―― 神谷さん?に、黙ってる???
―― 何を?!

「だから私が一体何をしたっていうんですか~~~!!」

すっかり混乱した総司は、一人叫んだ。
それでも、にやにやとするばかりで誰も答えてはくれないことに苛立った総司は、隊部屋からも逃げ出して、洗濯をしているセイの元へ向かった。
セイの姿を見つけると、むくれながら話しかけた。

「あ!神谷さん。きいてくださいよ~。なんだか皆が変なんですよ」
「……………」

総司に背を向けててきぱきと洗濯物を干していくセイに、総司は一人で続けた。

「なんだか、隅におけないとか、大人になったとか、もうわけがわからないですよ。あれ?神谷さん?」

一人切々と状況を訴える総司を視界に入っていないとばかりにセイは、黙々と洗濯物を片づけると総司を完全に無視してサクサクと立ち去っていく。その後を総司は慌てて追いかけた。

「え?神谷さん?ねぇ、神谷さ~ん!!」

隊士棟へ戻ると隊士達がセイを見てぴきっと凍りつく。セイの周りに漂う、ただ事ではない気配に皆がそちらを見ないようにしているのに、総司だけがまったく理解できず、セイの後をついて歩いている。

「神谷さんてば~!私、何か怒らせるようなことしましたか~?」

ビシッ。

周囲が一斉に固まった。

「・・・さて?なんでございましょう?」
「か、神谷さん?」

にっこり。
この上なく落ち着いたセイの笑顔が余計に恐ろしい。振り返ったセイは丁寧に、かつきっぱりと総司を拒絶した。

「沖田先生は私の他にご用がおありでございましょう?失礼いたします」

凍りつく冷気を漂わせて、セイが立ち去ると、一番隊の隊士たちが総司の元によってきた。

「お、沖田先生、今は神谷に近づかない方が……」
「そ、そうですよ。俺達は何も言ってませんけど!」

―― 何を?!

「だから私が一体何をしたっていうんですか~~~!!!」

苛立った総司が再び叫び声をあげた。

 

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さて。

お好みをお選びください。
Aの総司   Bの総司

– 終 –