黄金律

〜はじめのお詫び〜
デイリー実況してるみたいですね(笑
艶夜の翌朝です。しみじみした時間ですね。BGM:絢香×コブクロ あなたと
– + – + – + – + – + – + – + – + – + –

まだ薄闇の漂う中で、ふわりと浮かびあがった意識が不思議で、セイは目を開いた。

一瞬、今自分がどこにどんな風にいるのかわからなくて、目をしばたいた。耳元で、安らかな寝息を感じて急に昨夜のことが思い出された。

どこで意識を手放したのかも覚えていない位、嵐のような時間を過ごしたことだけは覚えている。

いつの間に着せられたのか、夜着もきちんと整えられていて、今自分がその人の腕を枕に、肌の温もりを感じながら眠っていたのだと、ようやく理解する。

目を閉じると、自分を抱き寄せる人の確かな鼓動と、安らかな寝息にほっとする。この人は、屯所にいて眠っているときも、どこかで意識は休まることなく、自分が泣きべそをかいて、夜中に抜け出すと必ずと言っていいくらい見つけ出された。

そんな人が、こうして深い眠りに漂っている。

あれほど、自分を狂おしく求めても、この人が伝えてくる想いは、幼子のように切なくてまっすぐで、溢れるような思いに、セイの中に不思議な感情が芽生えはじめていた。

ずっと、恋しいと思っていた人が、愛おしくてこんな安らいだ寝顔をずっと見ていたいと思う。母性とも呼べるそれは、かつて、隊部屋で総司の寝顔をながめていた時からは全く違っていて、ずっと大きなものとして育ち始めている。

5つも年上で、ずっと自分を導いてきたこの人が、こうして自分にすべてを預けるようにして眠る。

黄金律。

その言葉が思い浮かぶ。
この人が不安に怯えたことは、セイにとっても本当は同じことだ。医者とはいえ、隊士としてのセイはあのようなものに襲いかかられても、いかようにもできる自信があった。
それでも、女子のセイが、どこかで怯えていた。どうしても敵わない男女の力の差を、清三郎の頃に嫌というほど身に沁みていにも関わらず、再びその力の差に組み伏された。

その時、セイの中の女子が総司の姿を求めていた。
抱き寄せて、安心させてほしかった。

そして、隊士としてのセイは、そんな無様な姿を見られたくはなかった。仮にも、その人に育てられた自分が、そんなにも情けない姿をさらしているなんて、誰にも見られたくはなかった。悔しくて、恐ろしくて、あの後、泣いて、泣きやんだ後も、ずっと心の中で相反する思いが渦巻いていた。

まるでその思いを知るかのように、自分を抱いたその人を、心の底から愛していると思う。

セイは、そっと明るくなり始めた外の明かりに、身を起こそうとした。
しかし、眠っているはずのその人は、軽くなった腕の重さに、無意識にセイを求め、再び腕の中に抱き寄せた。

自分自身より、“私”を知るこの人に、セイは同じようにしたくて、その胸に額をこすりつけるようにして、総司の体に腕を回した。

「ん……セイ……?」

眠そうな声が耳元で聞こえる。総司の夜着の端を掴むように、擦り寄ると嬉しそうにぎゅうっと抱きしめて、再び眠りの中に戻っていく。

朝焼けのなかに、染みわたるような黄金律。

– 終わり –