恋情 7

〜はじめのお詫び〜
収拾しますよ。。。。えぇ。最後まで書いてますから!!

BGM:abingdon boys school HOWLING

– + – + – + – + – + – + – + – + – + –

夜更けに屯所に戻った総司を、酔いを冷ましていた斉藤が見かけた。隊士部屋に向う廊下の端で、呼び止める。

「こんな時間にどうした?」
「斉藤さん」

打ちひしがれた姿にこのところの不愉快さが増す。急にセイを引き取ったこの男が、ずっとおかしいのはとうに気がついていた。

総司の手に、セイの刀があることに気ずいた斉藤は、眉をひそめる。
一度は持ち帰った刀を持ってきているということは、家には置いておけないからだろう。

はーっ、と酒気と共に不愉快さを吐き出した斉藤は、周りに誰もいないのを確かめて、思い切り総司を殴り飛ばした。

「どうだ、殴ってほしかったんだろう?沖田さん」

盛大に吹っ飛んだ総司は、乾いた笑いを浮かべた。

「はは、さすが斉藤さんだ。やっぱり敵わないや……」
「で?何があったんだ」
「え?何がって……」

「急に神谷を辞めさせたのは何があったのかと聞いてるんだ。今夜にしてもそうだろう」
「うわぁ……斉藤さんてば……。でも言えないんです」

はたり、と殴り飛ばされたまま、床の上に寝転んだ総司は、そのまま目を閉じた。
その横に座り込んだ斉藤があっさりと看破する言葉を口に乗せた。

「色小姓の件か」
「な、なんでそれを!!」

がばっと身を起こした総司が斉藤の肩をつかんだ。

「アンタが急にアイツを辞めさせたのは副長の色小姓役が本当になったんじゃないのか?」
「な、なんで」
「……勘だ」

本当は、野暮天の総司じゃあるまいし、見ていればわかるというものだ。
初めはおおっぴらに嫌がりつつも、ぶつぶつと文句を零して何とか勤めていた小姓を、あるときからぴたりと何も言わなくなったのだ。
何かあると思うのが当たり前だ。ただ、衆道嫌いの副長がまさか、とは思っていた。

しかし、程なくして強引な言い訳で総司がセイを引き取ったことで、総司との仲がばれたのか、嘘の色小姓が本当になったのか、どちらかだと思っていた。

これまでそれを、総司や土方に確認しなかったのはセイを慮ってのことだった。

「……男っていうのは、情けないものですねえ」
「人が、惑うのは当たり前のことだ。花に惑い、恋に惑い、人生に惑う。だから俺達には武士道があるんじゃないのか」

心惑うとき、それを潔く断ち切るために。心のあるべき場所を見定めるために。

「そうか……。さすがですね。斉藤さん」

それ以上、何も言わずに、斉藤は立ち上がると隊士部屋に引き上げていった。今何を言っても、取り返しがつくものではないのだろう。

それから総司は、屯所に留まり、休息所に帰ろうとはしなくなった。

斉藤は、そんな総司にも何も言わずに、ある日セイのいる家を訪ねた。
久しぶりに会った斉藤にセイは驚きながらも家に招きいれた。

「元気か?」
「斉藤先生もお元気そうで何よりです」

斉藤の前に茶を出して、セイはその前に座った。
微妙な距離が異性に対する怯えと、兄と慕う斉藤への思いとの揺れを表していた。

「沖田さんは、ずっと屯所にいるようだな」

斉藤の言葉に瞳の中が揺れる。視線を逸らし、こく、とセイが頷いた。
その瞳からぽつり、と涙がこぼれる。

「何も聞きはしないが……たまには俺も頼って来い」

泣き出したセイを変わらない表情で眺めながら、斉藤はそう告げた。
自分はどこまでも男でしかないので、女子としてその身に起きたことは理解はできない。

だが、きっと。

斉藤は、セイが泣き止むまで黙ってただ座っていた。そして、いくらか落ち着いた頃、暇を告げた。

– 続く –