続々・強者の伝説<拍手文 10>

〜はじめの一言〜
拍手文8までの外伝のような・・・。
BGM:
– + – + – + – + – + – + – + – + – + –

先日来、どっぷりと己の不甲斐なさに落ち込んでいる仁科は、濃い顔ぶれの多い一番隊の中でも日毎にその存在感が薄くなっていた。

―― 駄目だ。これほどまにで己が情けないとはっ…。

「あれ?仁科さん、どうされました?元気ないですね」
「かっ、神谷さん?!」
「はい、神谷ですけど…」

あまりの動揺っぷりにセイが不思議そうな顔で仁科に近寄って、ぴたっとその額に手をあてた。 真っ赤になった仁科に、セイが眉をひそめた。

「少し、熱があります?だから元気がないのかな」
「そ、そ、そんなことは、ありませんっ!!」
「そうですかぁ?うーん。でも元気ないみたいですし……。あっ!そうだ!!」

突然何かを思いついたのかセイが仁科を引っ張って、幹部棟の小部屋に引っ張っていく。 何が何だかわからないまま、真っ赤な顔でセイに連れられて行く仁科を隊士達が呆気にとられて見ている。

「な、な、な、なにをするんですか?!神谷さんっ」

慌てふためきながら、すっかり声の裏返った仁科の言葉にセイが幹部棟への廊下の端でようやく振り返った。

「ふふ。いいことしてあげます!」

にこり。

ずささささささささ。

告知隊、警護隊の各隊士達がすわ、緊急事態とばかりに走りだした。

……―――

「あれぇ、この辺気持ち良くないですか?」
「……~~~~っ!!!」

告知隊と警護隊の通報により駆け付けた総司と、原田、永倉の両謀り隊副長が幹部棟に駆け付けた。

「か……かみ、やさん……もう……」

小部屋の前まで来た総司達の耳に息も絶え絶えの仁科の声が耳に入った。

くわっ。

すぱーん。

「何やってるんですか!!」
「あ、沖田先生!」
「……?」

目の前には、丸めた布団を抱えた仁科が鼻血を出しながら悶えている。その片足を掴んで、セイがぐいぐいと押していた。 飛び込んできた総司達に、セイがきょとん、とした顔を上げた。

「か……みやさん?何やってるんですか?」
「あ、足のツボを刺激してるんです!この前、南部先生のところで一緒に按摩と鍼治療の先生に教えていただいたんですよ?足の裏には全身のツボが集中してるんですって。仁科さん、お疲れみたいだからちょうどいいと思って」

ぐい。

「……っ!!」

口から涎を垂らし、白目をむいた姿で仁科はパタリと力尽きた。あれ……、と言ってセイは仁科の足をおろすとにこにこと三人を手招きした。

「先生方もいかがですか?体の悪いところもわかるんですよ?」

そういうセイに、ぐいぐいと掴まれて三人はそのまま小部屋に引き込まれた。
初めは面白そうだと永倉が先に横になって布団を抱えた。

「うぉっ!!!!」
「あ~!!永倉先生飲み過ぎですよ。このあたりは肝の臓のあたりですからね。よーく揉みほぐすといいんです。面白いんですよ。ちゃんと体と一緒で繋がってるんですよねぇ。すぐここらへんが膀胱で……」
「のあ~~~~!!!!」
「逃げちゃ駄目です!!」

両手で両足の裏をぐいぐいと揉みほぐされて、永倉があっという間に白目になった。

「あっ、原田先生!!肩こりがひどいみたいですねえ。ここの親指の付け根がすごいですよ」
「あんぎゃーーーーっ!!!」
「それに!!踵からこの足の外側にかけて!!遊びが過ぎますよ!!」
「ふんぬうううううう」

ぽたっ。

確かに、そういうツボも存在する。次は、と総司に向けてセイがにっこりと笑った。

「お待たせしました。沖田先生!」
「いえ……その…私は遠慮を……」
「え~……。駄目、ですか……?」

ずっと彼等の足を揉みほぐしてきて、薄らと汗ばんだ姿に紅潮した頬でセイに見つめられて、うっ、と総司は逃げ道を無くした。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」

―― ………合掌

後日、藤堂の流血の伝説に新たな記録が書き加えられた。

 

– 終 –