続・強者の伝説 1<拍手文 9>

〜はじめの一言〜
拍手文8までの外伝のような・・・。
BGM:
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ある日の昼下がり。
新人隊士の五名がたまたま一緒に非番になり、飲みに出かけた。

「はぁ……」
「なんだよ」
「いやぁ……」

はじめにため息をついた山田宗平が物憂げな顔で皆の顔を見渡した。

「仁科も香川も腕に自信をなくしたって、あれ以来落ち込んでるし、それぞれの組では先輩達に使いっぱしりさせられてるだろ?」
「ああ、そうだなぁ」

先日の歓迎の宴の帰りに、自分達は酔っていてほとんど使い物にならず、へべれけに酔っていたセイに四人まで討ち取られた。
小柄で、小姓で、美童ということもあり、どこかで自分達のほうが強いと思っていた彼らは、その矜持をこてんぱんに打ちのめされたのだ。

「俺達は早々に戦線離脱していたからまだよかったよな」

しみじみとつぶやく声には深いものがある。

というのも、彼らは入隊後に幹部に誰が一番早くなるか、などと夢を語り合っていた際に、隊務の励みになるものが必要だという話に流れた。
そして、幹部達の覚えもめでたく、古参のセイをこの中の誰が落とすか、という話に流れ着いた。
セイに関して言えば、早々に相方は総司だの土方だのと次々に名前が挙がるだけに、かえって落とし易しを思われたらしい。
今飲んでいる彼らは、序盤戦で総司に叩きのめされた三人と原田と中村にぶちのめされた二人である。

「あちこちで先輩達が『血をみるぞ』っていってただろう?あれって、俺、いろんな解釈があるんだなぁって勉強になったよ」
「というと?」

皆が膝を進めてきた所に、山田がしみじみと数えだした。

「ひとつは自分らが血を見る、だろう?これ、神谷さんに、じゃないんだよなぁ」
「他の先生方な……」
「容赦なくぶちのめされるよなぁ」

皆が経験者だけに一斉に頷く。

「次に、神谷さんの手によって、血を見る、だろ?」
「すばやかったよなぁ」
「力では適わないだろうけど、その分早いからなぁ」

しみじみと酒を飲みながら語りあっていた彼らの背後から告知隊隊長の平助が現れた。

「あれぇ。皆ここで飲んでるんだ。俺も混ぜてもらおうかな。何の話?」

隊内でも、若い容姿と爽やかな人柄で、彼らは原田や総司のような恐怖を覚えずに平助を迎え入れた。

「ちょうど、神谷さんの話をしていたんですよ。先輩達に『血をみる』って言われてたんですけどね…」

そういうと、これまでの話を藤堂に説明しだした。もちろん、告知隊の隊長だけあって、先日の一件もすべて耳にしていた平助だが、知らぬふりで興味津々とばかりに、耳を傾けた。

「……ってことで血を見る、にも色々あるなぁって言ってたんですよ」
「なるほどねぇ。じゃあさ、もっとあるよ。聞きたい?」

にっこりと優しげな笑みに五人は一斉に頷いた。にこっと笑った平助は山田に代わって指を折って数え始めた。

「まずねえ、血を見るのは鼻血!!これは被害者多いんだよ~。斉藤でしょ?あと、平隊士の……」

数え上げる平助の指が次々折られていって、その数に五人は驚きを隠せなくなった。

「それからねぇ……」

告知隊の任務を着実にこなしていく平助によって、今日も伝説は語り継がれていくのだった。

– 終 –