寒月 4

〜はじめのお詫び〜
斎藤さんファンの皆様すみません・・・

BGM: How Soon Is Now

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柔らかな手が斎藤自身をやわやわと揉みし抱きながら、お才は素早く口に含んだ。巧みに舌を使い、吸い上げるとすぐにそれは力を得て、お才の口いっぱいに収まりきらぬほどになる。

「かみ…や…やめろ…」
「やめませんよ。斎藤先生、お好きなだけ…」

ぴちゃり、と舐めあげた先で斎藤自身がぴくりと震えた。ねっとりと絡みつく舌に、せりあがる感覚が斎藤を襲った。ただ、それは手放してはいけないと強く思っているが故に、気力が遮る。しかし、薬のせいで感覚だけが鋭敏で、お才の手管に逆らい難い感覚が湧きあがる。

鎌首をもたげたそれを、舌先を使って巧みに舐めあげたお才は、口に入りきらぬあたりを強く手で扱きたてた。

「う…はぁ…かみ……」

―― どうやら、神谷というものがこの男の弱味らしいねぇ

お才は駄目押しとばかりに、襦袢の裾を開き斎藤の上に跨った。己の秘所に斎藤をあてがうと、お才はゆっくりと腰を落とした。

「あぁっ…斎藤先生っ」

お才は深く腰を落とすと、ゆっくりと動き出した。先ほど万右衛門が撫でまわしていたせいか、潤んだそこに包み込まれたものは、斎藤自身が体の自由が利かないだけにお才の思うように翻弄され始めた。

「はぁっ…あんっあっ、斎藤先生っ、もっとっ」
「うっく…は…っやめ…ろ…」

お才が深く、浅く、己の快感を貪り始めると、斎藤はおもうに任せぬ感覚にさらに熱を炙られるようだった。己が果てれば、誘惑に抗いがたくなる。この意識をむしり取る甘い匂いに負けてしまう。
気力を振り絞って、その感覚と意識を切り離そうとするが、何度も名を呼ばれるたびに引き戻されてしまう。

「あぁん、斎藤先生っ、もっともっと、私の中にっ」

徐々に早くなるお才の腰使いに、泡立つような感覚がせり上がってくる。

「うぁぁっ、くっ」
「あっ、あんっ、もうっ」

己の重さも乗せて、ずんずんと腰を落としてくるお才に耐えられなくなった斎藤は、堪えに堪えたものを吐き出した。その斎藤の吐き出したものをすべて飲み込むように、お才の中がきゅうっと締め付けた。
お才は斎藤を中に包み込んだまま、斎藤の顔に覆いかぶさった。

「斎藤先生、教えてくださいな」

くちゃっと音を立てて、お才が動いた。ぴくりとお才の中で斎藤が動いた。

「斎藤先生、新撰組の中でお強いのはどなたです?」
「う…試衛館派の、者は皆…強い」
「斎藤先生は彼等よりお強い?」
「いや、本気でやれば…かなうまい」

くす、と笑いながら、次々とお才は必要なことを聞きとっていく。時折、ゆるっと腰を動かして、斎藤を意のままに操る。

「斎藤先生?お願いをきいてくださいますか?お願を聞いてくれるなら、また神谷のことを、私のことをこうしてくださいまし。ご褒美ですよ」
「んむ…願い…?」
「ええ。お願い…」

艶然と笑ったお才の顔を、斎藤は覚えていることはできなかった。お才や喜助は焚かれた甘い匂い、阿片には耐性がついている。しかし、斎藤には、限界ぎりぎりの量が使われていた。
捕えられてから二日目になる。

 

 

屯所内は、昼夜をかけた探索にも関わらず、斎藤の行方はわからなかった。

「神谷。その面はなんだ」
「なんでしょう」

剣呑な土方の視線に、セイが不機嫌そうに答えた。
どちらも睡眠不足な上に、苛立っているため、事あるごとに土方とセイは正面から角を突き合わせていた。

「お前のその面だ、面。寝不足がありありと顔にでてるじゃあねえか」
「鏡でもご覧になったんじゃありませんか。副長こそ寝不足もこれ以上ないくらいの顔をしてらっしゃいますよ」
「なんだと!」

苛立った土方に、こちらも負けずと苛立ったセイが言い返す。その声に近藤が部屋から出てきた。

「二人ともやめないか。二人の心配はわかるが、今はここで二人が噛みつき合っていても仕方がない」
「…すまん、近藤さん」
「申し訳ありません」

土方とセイがそろって頭を下げた。
二人の苛立ちはそのまま隊の中の苛立ちと同じだった。近藤は妾宅には戻らずに屯所にとどまっており、副長室の片隅に床を取るセイと土方では二人揃って横になっていても眠っていないのはお互いに分かっている。

夕餉を終えた所でいがみ合っていた二人に割って入った近藤は、セイに客間で寝るように言った。

「そんな、大丈夫です」
「いや、神谷君もトシもそれぞれ今夜くらいゆっくり休むんだ。これは局長命令だ」

そう言われれば逆らえない。セイは、頭を下げると副長室の中に戻って、土方の床の支度をすると、すぐに客間に向かった。客間の中に床を引いたものの、眠る気にはなれずに再び廊下に出る。

しん、と静まり返っている屯所内は疲労と緊張に包まれていた。
廊下の端に座り込んだセイは、疲労と寝不足で考えのまとまらない頭のまま、ぼんやりと外を眺めていた。くたびれたセイは、両手で顔を覆った。

「兄上…っ」

じわりと浮かんでくる涙を両の手で強く押さえた。泣いたら、斎藤の身に何か悪いことがおこる気がして、浅く息をつきながら必死で涙を堪えた。

「今夜はゆっくり休むんじゃなかったんですか?」

びくっと手を離して振り返ったセイの視線の先には、廊下の端に総司が寄りかかっていた。腕を組んで目を細めているときは、総司の機嫌があまりよくない時である。

「あ……」

深いため息が聞こえて、総司はセイの背後に立った。

「立って、部屋へ行きなさい」
「沖田先生」

振り返って総司を仰ぎ見るセイに、総司は手を差し出した。その手に掴まって立ち上がったセイを総司が羽織でくるんだ。

「貴女がそんなじゃ、斎藤さんが戻った時に私が叱られます」

ばさっと頭から羽織の中に引き込まれたセイは、包み込まれた温かさに先ほど堪えていた涙が溢れて、その胸元に縋りついた。

「ほら。大丈夫ですよ。必ず無事に戻ります」

堪えられずにこくこくと懐で頷くセイの背中を、総司は優しく叩いた。その総司も斎藤が行方知れずになってからほとんど眠っていないことを知っている。それでも、総司がそう言えばきっと戻ってくる気がした。

 

長い夜が続いていた。

 

 

 

– 続く –