夢見る時間<拍手お礼文 挑発4>
BGM:Dream Come True LOVE LOVE LOVE
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「ねぇ、セイ?」
「はい、なんでしょう?」
「あのぅ、怒らないでくださいね?」
「はい?」
ふっくらし始めたセイのお腹に手を当てた総司が困った顔をしている。
妊婦の癖に、新人隊士よりも素早く敵を打倒したという話の後に、また散々皆に叱られたセイが家に帰ってから、セイの膝枕で横になっていた総司が、セイのお腹に手を当てた後に、セイの顔を見上げた。
「その、私は本当にわからないからなんですけど、貴女の場合はあまりその、体にでないんですか?」
「?どういう意味です?」
「えと、その、いろんな変化ですよ。お腹が大きくなる以外のことは私にはわかりませんもん。何がつらくて何が楽なのか教えてもらえると……その……」
どうやら、横になるのがいいのか、何をしているのがいいのかわからなくて尋ねたらしい。
くすっとセイは微笑んで総司の髪に手を伸ばした。
「そうですね。変わったことと言えば、好みが少しかわったとかでしょうか。お腹は、あまりわかるようにはならない性質みたいです。あと、走っても何をしても平気ですけど、疲れたり緊張すると、お腹が張ってしまうので、それは赤子にはよくないみたいですね」
「ふうん。じゃあ、今までとあまり変わらないんですか?」
「ええ。別にお腹が張っていない時なら横になっていなくても平気ですよ」
頷いたセイの顔を見て、総司は畳に両手をついて半身を起こした。
セイの顔の高さと同じくらいまで身を起こした総司がそっと耳元に何かを囁いた。
「……知りません」
薄ら頬を赤くしたセイがふいっと顔を背ける。総司はそのまま胡坐をかいて座りなおすと、べったりとセイの肩の上に顔を乗せた。
「だから怒らないでって言ったのに」
「そういう問題じゃないです」
ぷいっと拗ねてしまったセイは総司の体を押し返して、台所へと火の始末をしに行った。
ごろん、と畳の上に横になった総司は頭を抱えて、ごろごろと転がった。
「だって……しょうがないじゃないですか」
こちらも少しだけ拗ねた声を上げて、総司はそのまま目を閉じた。
その夜、セイが隣で健やかな寝息を立てている隣で、総司はごろりと寝返りを打った。
セイの懐妊がわかって、共寝をしなくなってずいぶん経つ。
元々、他の隊士達のように頻繁に花街に足を向ける方でもなかったが、それはそれ、これはこれ。
仕方がないことだけに、特に苦にも思っていなかったがセイが岩田帯を巻いたあたりから原田の攻撃が始まったのだ。
「総司っ」
「なんですよう。原田さん」
「お前、そろそろアレだろ?加減してやれよ~。俺なんかおまさに怒られたもんだぜ」
「はぁ?!何を言ってるんですか!」
「そうはいってもまた、妊婦の乳ってのがほんとに堪らんのだよ。こう、揉まずにいられるか!ってかんじで」
耳元でぼそぼそとけしからぬことを囁く原田からそそくさと逃げ出した総司は、はぁ、とため息をついた。当然、健全な男子であるから、勃然と思うこともないわけではない。
だが……。
事あるごとに、原田のニヤニヤとした戯言に、げんなりしていたものの、それだけ聞かされていればおかしくもなる。暗闇の中で天井を仰いでぼそりと総司は呟いた。
「恨みますよ、原田さん」
目を閉じて何とか眠ろうとすればするほど、セイの柔らかな胸を思い出してしまう。
「~~~~っ!!」
堪らなくなって、そっと布団を抜け出すと、総司は部屋から出て行った。
居間を抜けて、納戸に入ると、はぁ~と深いため息をついた。
半ばほどは主張する自分自身に、壁を背にしてずるずると座り込んだ総司は膝の上に腕をのせた。
以前は全くしなかったが、セイと一緒になってからは時折どうしても必要に迫られると密かに納戸に籠っていた。
もちろん、セイが寝てしまってからの事だし、気づかれてはいないだろうが。
なんとも情けない顔になった総司は手すさびにもならず、膝の上に頭を乗せてため息をついた。
「その胸も、大きくなったり感じやすくなったりするんですか?」
密かに囁いたことにセイが怒ってしまったのだが、懐妊がわかってすぐの頃は、他意なくうっかり触れただけでも痛がっていた。
最近では、気を付けていることもあってそんなそぶりもないのだが、そうなってくると、原田に言われたことが気になってくる。
セイはもともとさらしで押さえつけていたこともあって、そんなに胸が大きい方ではなかったが、そこは夫婦になれば違ってくる。
いくら野暮天の総司とはいえ、気になるものは気になるのだ。
仕方なく、心の中ではセイにごめんなさい、と詫びながら手を伸ばしかけた瞬間、背後の戸が動いた。
「?!」
「……あっ」
顔を覗かせたセイが慌てて戸口から消える。はっと我に返った総司は伸ばしかけた手を引っ込めて、顔から火が出る思いだったがセイの後を追いかけた。
セイは、居間から寝室への襖の前で、口元を押さえて背を向けていた。
「あ……の」
「ご、ごめんなさい。私何も……」
気まずいながらも声を掛けようとした総司を遮って、セイが早口に言った。屯所での生活が長ければ総司が何を、というのもすぐにわかる。
耳まで真っ赤になって、互いに暗い部屋の中で身動きが取れなくなってしまった。
がっちりと身動きの取れなくなった部屋の中で、どうしよう、と思っていたセイが不意に動いた。くるっと振り返ると総司の顔を見ないようにして、その手を掴んでぐいぐいと寝室へと連れて行く。
「あ、あの、ちょ、セイ?」
無言で総司を布団に押し込むと、自分もその隣に横になる。
「?!っ」
セイの腕が総司の枕の下から伸びて、驚く間もなくセイの胸に総司の頭は抱えられた。
横抱きのまま、セイの胸元の柔らかさを頬に感じる。
「……お腹も大きくなってきて、すっごく恥ずかしいんです」
触れた胸からひどく早い鼓動が伝わってきて、どれだけ緊張と羞恥でいっぱいになっているかがわかる。
それでも精一杯の行動に総司は嬉しくなってふふっと胸元に顔を埋めて笑った。真っ赤になったセイの顔を見上げるようにして、首元の袷の隙間にちゅと口づけた。
ぴくっとセイが動くのを腕を回して抱きしめる。ふっくらしたお腹をかばいながら背中に腕を回すと総司を引き寄せていたセイの腕が緩んだ。
「もう、触っても痛くないです?」
こく、っとセイの喉が鳴って、早鐘を打っていた鼓動がますます早く大きくなったのを感じる。
何より正直な答えに、総司が笑った。
「も、もうっ、そんなに笑わなくったって……」
「だって、セイってば可愛いんですもん」
そっと、浴衣の上からセイの胸を包み込んで、深く息を吸い込んだ。いつもの、甘いセイの香りと、手に触れた柔らかさにうっとりする。
鼻先で上前を押し上げて鎖骨の少し下の方へ口づける。
「ちょ、総司様っ」
「ちょっとだけ、ね?」
そのまま上前の間に手を滑らせて、直に触れる。
大きくいくらか張りの増した、それでも柔らかな胸を掌で包み込む。
「柔らかくて、気持ちい……」
「……もうっ」
熟した桃を扱うように総っと掌を滑らせると、両胸の間に顔を埋めた。
膨らみの上にちゅ、と軽く吸い付くとすぐに朱色の跡がつく。
そのまま赤子のように柔らかい胸を揉みながら吸い付いた。
「んっ……。駄目っ、総司様」
慌てて離れようとするセイを片腕で引き寄せて、総司は目を閉じた。
「もう少し。今は、これだけで我慢しますから……」
「もう~……」
ぺろりと舌を出した総司に負けて、セイは抵抗を止めた。どうせどこまで言っても総司には逆らえない。
甘ったれで我儘で、大好きな夫の願いに応えてしまうのだった。
– 終わり –