兄の言い分<拍手お礼文 挑発5>

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珍しく、外出の後に市中の噂話を拾うという名目で花街に足を向けた土方は、久しぶりに顔を見せる妓達に何かをと思って小間物屋の店先に目を向けた。

女子供が買い求めるような品が並ぶ中、ふと、子供向けの梟のおもちゃや、木を組み合わせた蛇、ハト笛などが並んでいるのを目にとめた。
それらはやはり、赤子にはまだ早いが、これならばと竹細工に手を伸ばした。
丸い玉の中に鈴が入っているもので、転がせばちりん、ちりん、と鈴が鳴る。

赤子をあやすにはいいかもしれないと、籠の上から手に取った。

「お子様にでございますか?」
「あ、いや、その、近々弟分のところに生まれるもので、つい」

店先に出てきた娘にしどろもどろに応えると、くすっと笑われてしまう。赤くなった土方はばらばらとそれを娘に渡した。

「その、いくらだ」
「こんなにお買い求めいただくのはありがたいのですが、これからお生まれになるんですよね?それでしたら、二つほどでよろしいかと思います」

確かに慌てた土方は、娘の手に五つほど乗せていた。

「あ、む。そういうものか……。そうだな」
「いえ。少しお待ちくださいまし」

娘が奥に入って、玉を包むと土方は言われるままに代金を支払った。

「よろしければまたお立ち寄りください」
「あ、ああ」

逃げるように店先から出た土方は、花街に向けるはずの足を屯所に向けた。
門を入ると、診療所からは相変わらずのやり取りが聞こえてきて、渋い顔になった土方はそのまま幹部棟の自室へと戻っていく。懐に入った鈴は、渡す機会を失って、副長室の小棚へとしまわれていった。

「あいつら……。親になろうってのに、少しはかわらねぇのか」

ぼそりと呟いた土方はわざと障子をあけて、診療所のにぎやかな声を聞こえるようにした。
あのままではじきに収集がつかなくなって、総司が逃げ込んでくるはずだ。少しでも経緯を耳に入れると、にやりと笑った土方は、そ知らぬふりで文机に向かった。
毎度のやり取りに慣れてしまっている自分には目を瞑って、さて、今日はどうしようかと思案を巡らせる。

実の兄以上に、兄らしい土方であった。

 

– 終わり –