花水木~土方Ver

〜はじめの一言〜
素直じゃないのに、情はめちゃくちゃ深そう。現代なら相当ダークな人だと思います。

BGM:一青窈 ハナミズキ
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14代将軍家茂薨去。

文机から離れて、少しでも風の動くところへと縁側にでた。
沈む夕日を送るように、風が強く吹きはじめた。昼間の暑さを拭い去るような強い風は真紅の夕日に薄い雲を流し込んでいる。

―― ああ。まるで今の幕府のようだな

儚いならいっそ、このまま潔く散ればよいものを。

―― なあ、近藤さん。俺達はどこまで行くんだろうな

室内で蒸れていた、体にまとわりつく熱気が風にさらされて冷まされていく。
その風は、土方の心の内まで拭き荒らしていくようだ。

次期将軍が決まるまで、征長戦は持つだろうか。

次々と土方の心には先の見えない闇が広がっていく。
もう徳川の世は持たないだろう。この腐りきった幕府に未来はない。そう遠くない先に、終わりが来ることはもう違えようのない事実だと思えた。

―― その時、あんたはどうする?徳川とともに逝くのか?
―― こんな腐りきった徳川のために、あんたをなくすのか。俺は。

そんなことのために、俺達は武士道を貫いてきたのか。

刻々と沈みゆく夕日は、空を朱に染めてその姿はもはや見えず。

―― 勝っちゃん。
あの日、俺と一緒に武士になると言ってくれたあんたを俺はどこまで守れるだろうな。
あの時から続く、幸せを俺にくれたあんたに俺は何ができるだろう。
なあ、勝っちゃん。

俺達は、どこまで行けるだろう。楽園を背負って。
花言葉:返礼

– 終 –