逢魔が時 14

〜はじめの一言〜
ありえなくても、きっと幸せにという願いは響き合って、広がって、いつかみんなが幸せだといいね。
BGM:Metis アオギリの木の下で…
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――2年後。

あれから、歳也と総司はそれぞれの手紙を持って店を去り、それから一言もお互いに触れることなく、斎藤や藤堂もそのことに触れることなく、時折酒を飲み合う仲間として過ごしてきた。

時には、近藤や原田とともに山南の生まれたばかりの子供と明里を訪ねたりもした。

仕事も順調で、平和な日々の中で静かに己の過去と過去からの手紙と向き合う日々を重ねた。

 

「総司もいく?」

もはや、年の差を超えて、藤堂が気軽に話しかけた。昼の営業の際のデザートをぜひにとせがんで、こうしてバータイムだというのに酒と甘いデザートを並べる男にむかって。

「どこですって?」
「なんだっけな。えっと六本木でやるんだってさ」
「六本木ですかぁ?」
「いいじゃん。そんなに遠くないしさ。仕事場からも近いでしょ」

相も変わらず、歳也のところには職業柄色々なチケットが回ってくることが多い。この前は東京ドームの野球観戦だったし、今度は音楽イベントらしい。藤堂にも回っているということは枚数が多いのだろう。
総司は手帳を開きながら、予定を確認している。

「んー、その日は仕事なんですよね。早く終わったら合流でどうです?」
「いいけどさ。ほんとに最近仕事忙しそうだね」
「商売繁盛ですよ。不景気だからですかね」

歳也は、行けたら行くといい、総司は仕事が終わったらという。二人とも、こうして出て歩くことは嫌いではなくせに、何に行くのかさえ見ないで現れることが多い。

2年だ。藤堂が毎日メールをおくり、原田が様子を見に立ち寄り、近藤や山南が手紙で説得し、それでもうんと言わなかった。二度と自分に連絡をしてくれるなと、何度も言われてアドレスを変えたり、引っ越したり、それでも皆が探し出して説得した。
最後にそれまで一度も協力しなかった斎藤が、『俺が心配だからそろそろ帰ってこい』といい、その一言で、神谷の帰国が決まった。

海外にいても、神谷のことはそろそろ名前が知られ始めていたから、帰国するという話に、さっそく仕事が入ったと言っていた。

この2年。藤堂には彼女ができて、でもうまくいかなくて別れた。歳也はそこそこ合コンなどにも呼ばれて行っているみたいだが、特定の人は結局できていない。総司は仕事三昧の日々に明け暮れている。それが気楽みたいだ。
斎藤だけは、病院関係の知り合いの紹介で近々婚約するらしい。

ねえ、神谷。

もういいよ。帰っておいでよ。

そして、もし今度運命の出会いがあったら、迷わず行くんだよ。
好きな人と幸せになる権利は、神谷にだってあるんだよ。俺達は、ずっとずっとそう思ってるよ。

総司や歳也が、ろくに見てもいないはずのチケットが藤堂の胸ポケットに入っている。
『MUSIC Event 逢魔が時―祈り―
演奏:Ukinosuke Yoshimura  Vocal:Riko Kamiya  AT:7/19 P.M.19:00〜 』

 

運命はまだ、これから。

– 終 –

最後なので、後のお詫びを。
この後、どうなるか、まあ、どなたか読んでくださって、読みたいよーという方がもしいたら、続きを書くかも。
いや、こんな筆力もない阿呆の戯言などみたくな〜いという方が多いだろうな(笑
まあ、書けたらいいなーと思います。